第55回地学団体研究会総会決議その2

「地域の自然を学ぶことのできる教育条件の整備を訴える」声明



「地域の自然を学ぶことのできる教育条件の整備を訴える」声明

 近年、有珠山・三宅島の噴火や各地の集中豪雨による洪水、鳥取や広島・愛媛の地震などの相次ぐ災害や、諫早湾干拓やダム建設などによる環境破壊が大きな問題となっている。こうした中で自然・環境への市民の関心は高まっており、自然科学、特に地学を通して、地域の自然とそのしくみを学ぶことの必要性はますます大きなものとなっている。
 しかしこうした中、教育現場では子どもたちの「理科離れ」・「学力低下」が懸念されている。新教育職員免許法では教職科目や実習期間などが増えた反面、教科専門科目は大幅に減少した。これでは、学生が専門教科の内容や楽しさを知る機会・経験を十分得られないまま小・中学校の教員にならざるを得ず、野外観察を充実させ、生きた自然を教えることは難しい。教員の学ぶ機会を保障し、地域の自然に根ざした理科教育のできる教員を養成することこそ、子どもたちの学習意欲に真に応える道である。
 また、高校では地学の教員採用数は全国的に極めて少ない。「受験に直結しない」、「地学専門の教員が少ない」などの理由から、地学が開講されていない学校も多く、生徒の希望があっても選択することが困難な状況がある。
 新学習指導要領では授業時間数が削減され、学習内容も“3割”削減される。内容は制限項目によって細かく規定され、検定を通してそれが徹底された教科書は「薄く」なる。地域の自然やそれを生かした野外観察の重視をうたっている点は評価できるが、制限項目によって扱う岩石の種類や数を決めてしまうなど、学習の可能性を大幅に狭めてしまっている。それらは、あるがままの自然に触れる中から幅広く興味を発展させていく子どもたちの自然認識のあり方からはずれたものである。
 さらに、野外学習や体験学習の重視が謳われる中、地域の情報センター・自然学習センターとしての博物館等社会教育施設の役割はますます大きくなってきている。しかし、多くの博物館等では、それに十分対応できるような人的体制や予算面などの諸条件が整えられていない。
 以上、これらの状況を解決するのは、教育行政機関の責務である。われわれは、すべての児童・生徒が地域の自然を学習する機会を保障するため、各教育委員会に対し、理科教員の確保と授業を行うにあたっての諸条件の整備、各地域の博物館等社会教育施設の充実を強く訴える。

2001年8月4日
地学団体研究会第55回総会



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Updated: 2001/08/09
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