地球科学,50(4):273-276. (1996)

山形盆地須川の砂州上面に発達するベッドフォーム*
−植生によって流水の制御を受けた堆積構造の多様性−

川辺孝幸**

Current ripple developed on longitudinal bar in the Sukawa River,
Yamagata Basin, Northeast Japan:
Variety of sedimentary structure influenced by vegetationally local current

Takayuki Kawabe**



 図版1〜4,  図版5〜8, 第1〜2図

はじめに

 現世河川や海岸などにおける堆積構造の分布とその形態を知ることは,地層中に記録された堆積構造から過去の堆積環境を復元する上で有効な情報になる.
 河川性堆積物を例に取ると,河川形態に応じて模式的な堆積相モデルがたてられている(Miall, 1977, 1995, Walker, 1979 など)が,実際に現世河川で堆積構造を観察すると,場所ごとに様々な堆積構造がみられる.そして,それらの堆積構造の形成には微地形とともに,植生の果たす役割が大きい (Smith, 1976)ことがわかる.これらの堆積構造がそのまま地層中に保存されるとは限らないが,地層の堆積構造から堆積環境の復元をおこなううえで,植生によって制御をうけた流水による堆積構造の多様性は,けっして無視できない.
 ここでは,山形県須川河床で観察される植生の影響によって流速が制御をうけたためにできた堆積構造の表面形態と内部構造の一例を示す.

観察地点

 須川は,最上川の支流の一つで,蔵王山を源流とし,山形盆地に入って北流し,山形盆地中央部で最上川に合流する,流路長約25kmの河川である.山形盆地内では,盆地への流入部から約3km区間は河床勾配が10/1,000〜4/1,000で,網状河川に近い形態を示しているが,それより下流では河床勾配が4/1,000〜0.8/1,000で蛇行河川の形態をなしている(第1図第2図).
 調査地点は,蛇行が始まる地点から約4km下流の,山形県山形市飯塚町飯塚橋の下流の地点にある中州である(第3図-a).このあたりの須川は,自然の状態では蛇行河川であったが,現在では直線的な流路に改変されている.
 調査地点では,第3図-bのような河床形態を示している.すなわち,直線的な流路に入って流路幅が広げられており,広げられた流路の部分をうめるかたちで砂堆が発達している.砂堆の本流に面する側には,本流の流下方向にそって草が茂っている.図版に示す堆積構造は,この草の茂みの右岸側の,砂堆上面に発達している(第3図-b,図版1図版2図版3図版4).

砂堆上面の堆積構造

砂堆の表面形態  ここでの河床堆積物は,粗粒砂〜中粒砂からなる.流下方向に伸びる植生に対して斜交するやや岸側に向かう軸をもって扇状に広がるかたちで,下流側に凸な伸びを示す2次元デュ−ンが発達している.ちなみに,調査地点より上流および下流側に発達している堆は,いずれも中礫からなる礫質砂堆で,この州の基底部は礫質であると思われる.
 砂堆上面に発達するデュ−ンは,植生に隣接する部分では波長約60cm,波高約20cmであるが, 軸部では波長60〜150cm,波高20〜30cm,植生から離れるにつれて波高は低くなり,波長は長くなる.デュ−ンの表面には,波長10〜5cm, 波高1cm前後の2次元スモールリップルが修飾している(図版3図版4図版5).

内部堆積構造  このデュ−ンの断面を図版5図版6図版7図版8に示す.図版5のように,このデュ−ンの内部は,軽微な侵食面を境に,規模および形態の異なるカレントリップルからなる,少なくとも3つの堆積ユニットが識別される.一つ一つのユニットは,それぞれ1回の洪水を示していると考えられる.
 ユニットごとで比較してみると,最下部のユニットがもっとも波長が長く,リップルの形態もアンチデューンを伴っているのに対し,上位のものほど波長が短く,フォアセットの傾斜も急になり,波長に対する波高の割合が大きくなる.

堆積構造の形成過程

 断面で観察される堆積構造をつくったのは,前回か刷した1992年から観察した1993年秋までの間の,年1993年5月,7月,8月の3回の洪水であると推定される.もっとも水位が高かったにもかかわらず,上位のユニットほど堆積構造をつくった流速が遅くなっているようにみえるが,これは,各洪水の最大水深の違いもさることながら,季節変化とともに,植生が成長し,流水に与える影響が大きくなっていったためであると考えられる.
 また,最上部の現在の砂堆上面をつくっている堆積物の砂堆の岸側の断面では,本流の方向とは大きく斜交する岸側に近い方向に向かってフォアセットが形成されている(図版7,8).これは,流速の遅くなる減水期に,流向が次第に砂堆の形態に沿って変化した結果であると考えられる.

おわりに

 このように,ここで示した須川河床に発達する砂堆の堆積構造は,直接的には植生の影響をうけた増水時の流水によって形成された.なお,この植生自体および砂堆の形成のきっかけは,観察地点において河道が広がっているために,そこで流速が低下して砂堆が形成され,さらに本流側の岸にそって植物の種子が堆積した結果であると考えられる.

文 献

Miall, A., D. (1977) A review of the braided river depositional environment. Earth Sci Rev, 13:1-62.
Miall, A., D. (1995) The Geology of Fluvial Deposits. Splinger, 582p.
Smith, D., G. (1976) Effect of vegetation on lateral migration of anastomosed chanells of a glacial meltwater river. Geol Soc Am Bull, 87:857-860.
Walker, R., G. (ed) (1979) Facies models. Geological Association of Canada, St. John's, Newfoundland (Geosci. Can. Reprint Ser 1).


図版説明


図の説明